古物商許可を取得すると、許可証が交付されることになります。
許可証は、古物商許可を取得した者であることを証明するものであり、古物の取引の安全を相手に示すものですから、非常に重要な役割を果たしています。
とはいえ、営業所で古物営業を行うだけなら、この許可証は常に携帯している必要はありません。
なぜなら、営業所には標識(プレート)が掲示されているため、その標識でもって有資格者であることを証明することができるからです。
しかし、古物の取引は営業所だけで行うとは限りません。売主を便宜を図るために出張買取などのサービスを実施している古物商の方もいらっしゃることでしょう。
営業所以外で古物の取引を行う場合には、必ず許可証を携帯しなくてはならないことになっています。
今回は、許可証の携帯義務について詳しく解説します。
許可証の携帯は法律上の義務!
営業所以外で古物営業を行う場合、取引の相手は、外見からあなたが適正に古物商許可を取得した者かどうかを判断することは困難です。
また、営業所以外で行う取引では、ついつい帳簿の記載や相手の確認等の他の義務を怠ってしまいがちになるため、適正な古物営業の実施を確保するために設けられている規定です。
古物営業法11条1項
- 古物商は、行商をし、又は競り売りをするときは、許可証を携帯していなければならない。
なお、この許可証の携帯義務に違反すると、10万円以下の罰金に処されることになります。
行商とは
行商とは、営業所を離れて古物営業を行う営業形態のことで、以下のようなものが行商に該当します。
- 出張買取
- 露店の出店
- デパートの催事場での販売
- 古物市場での売買
- 中古車の訪問セールス など
古物商許可があれば行商をすることができるというわけではない!?
古物商許可を取得すれば、すべての古物商が行商をすることができるわけではありません。
行商ができるかどうかは、許可申請の時点で申請者自身で決定することになります。
<古物商許可の申請書(愛知県)>
※画像をクリックすると拡大できます。
上記の申請書において、「1.する」の方にチェックをすれば、行商をすることが可能となります。
今後の古物営業の形態によっては、行商は必要ない古物商の方もいらっしゃるでしょう。そんな方は「2.しない」にチェックをして申請すればよいわけです。
フリーマーケットは行商になるのか?
中古品を販売する場としてよく知られているのが、フリーマーケットです。はたして、フリーマーケットで不用品を販売することは行商に該当し、古物商許可は必要なんでしょうか?
結論から申し上げると、目的によって異なるのですが、一般的に家庭で使わなくなったものフリーマーケットでを販売する行為ついては行商に該当せず、古物商許可も不要となります。
なぜなら、古物商許可が必要とされる古物営業とは、あくまで「商売としての営業」であることが求められるからです。
国語辞典で「営業」を調べてみると、「利益を得る目的で、継続的に事業を営むこと。」と説明されています。
確かに、家庭で使わなくなった物は「古物」に該当することになります。しかし、フリーマーケットで購入時より高く売って利益を得たり、同じものを継続的に販売することは通常しないと考えられます。
ですから、フリーマーケットでいらなくなった物を販売することに関しては、「営業」には当たらないというこになるのです。
古物の定義についてはこちらでご確認ください。
一方で、フリーマーケットにおいて販売目的で仕入れた古物を販売して利益を得たりすることは、「営業」に該当することになるため、古物商許可が必要になるということになりますので注意が必要です。
なお、古物商がフリーマーケットにおいて、転売目的で古物を古物商でない者から買い受けることは禁止されています。
したがって、フリーマーケットにおい古物商は、基本的に仕入れをすることはできないということになります。(もちろん、古物商が自己利用のために購入することは問題ありません。)
行商従業者証の携帯義務
前述の通り、行商を行う場合には許可証を携帯しなければなりませんが、実際に行商をする者は、古物商の許可を受けた者ではなく、その従業員かもしれません。そして、その従業員は複数存在するかもしれません。
しかし、残念ながら古物商の許可証は1つしか交付されません。こんなときはどうなるのでしょうか?
この場合、古物商はその代理人、使用人、従業者に行商を行わせるときは、行商従業者証という証明書をその者に携帯させる必要があります。
古物営業法11条2項
- 古物商は、その代理人、使用人その他の従業者に行商をさせるときは、当該代理人等に、国家公安委員会規則で定める様式の行商従業者証を携帯させなければならない。
行商従業者証の様式
行商従業者証の様式は古物営業法施行規則によって定められています。
法定されている様式は以下の通りです。
<留意点>
- 材質は、プラスチックまたはこれと同程度以上の耐久性を有するものとすること。
- 「氏名」および「生年月日」欄には、行商をする代理人等の氏名および生年月日を記載すること。
- 「写真」欄には、行商をする代理人等の写真(縦2.5㎝以上、横2.0㎝以上のもの)をはり付けること。
なお、上記の様式に合致するものであれば、手作りのものでも問題ありません。
公安委員会から承認を受けた様式でもOK!
上記の法令で定められた様式以外にも、古物商で構成される団体が定めた様式であって、公安委員会から承認を受けたものも有効とされています。(その団体の構成員であることが必要です。)
古物営業法施行規則12条1項
- 国家公安委員会又は公安委員会は、国家公安委員会が定める団体が当該団体の社員、組合員その他の構成員である古物商又は古物市場主に共通して利用させるものとして定めた様式を、国家公安委員会が定めるところにより、行商従業者証の標識の様式として承認することができる。
この承認を受けている団体として、「社団法人日本中古車自動車販売協会連合会」と「全国刀剣商業協同組合」が存在しています。
許可証の提示義務
古物商またはその代理人、使用人、従業者が行商をする場合、取引の相手側からその許可証または行商従業者証の提示を求められたときは、これを提示しなければなりません。
古物営業法11条3項
- 古物商又はその代理人等は、行商をする場合において、取引の相手方から許可証又は前項の行商従業者証の提示を求められたときは、これを提示しなければならない。
義務とされているのは、あくまで「求められたときの提示」ですので、積極的に提示することまでは要求されていません。
しかし、些細なことですが取引相手が安心して売却できるように、提示してあげるということも1つのサービスといえるかもしれません。
まとめ
いかがでしょうか?
古物営業法には許可証の不携帯に対する罰則規定もありますので、「うっかり忘れた」では済まされない可能性があります。
許可証も行商従業者証も携帯しやすい小さなサイズとなっていますので、運転免許証のように常に持ち歩く習慣を身に付けていただきたいと思います。