古物商許可で必要な「登記されていないことの証明書」と「身分証明書」とはどんな書類?行政書士が解説します!

以前このサイトでは、古物商許可申請に必要な書類についてご紹介しました。


その中に登場するのが、「登記されていないことの証明書」と(※令和元年12月14日から不要)「身分証明書」という書類です。

日頃、滅多に使用することがないため存在自体を知らないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

しかし、許可申請においては省くことのできない重要な書類となります。そこで、今回は「登記されていないことの証明書」と「身分証明書」について解説したいと思います。

登記されていないことの証明書

※登記されていないことの証明書は法改正により令和元年12月14日より不要になりました。

登記されていないことの証明書とは、成年被後見人、被保佐人等の登記がされていないことを証明する書面で、全国の法務局、地方法務局の戸籍課にて取得することができます。(愛知県では名古屋法務局の3階に戸籍課があります)

以下のような書類です。(画像をクリックすると拡大します)
登記されていないことの証明書
下部の証明事項をよくご覧ください。確かに成年被後見人、被保佐人とする記録がないことを証明していることがご理解いただけると思います。

なお、登記されていないことの証明書は郵送での取り寄せも可能ですが、郵送の場合の申請先は東京法務局の戸籍課に限られていますのでご注意ください。

ちなみに、300円の収入印紙/通が必要です。

身分証明書

身分証明書とは、以下の事項を証明する書面です。身元証明書と呼ばれることもあります。

以下のような事項を証明する書面で、本籍のある市町村役場の戸籍課で取得することができます。

  1. 禁治産または準禁治産の宣告の通知を受けていないこと
  2. 後見の登記の通知を受けていないこと
  3. 破産宣告または破産手続開始決定の通知を受けていないこと



実際の身分証明書は以下のような書類です。これは愛知県愛西市の身分証明書をコピーしたものです。各市町村によってその様式は異なっています。

(画像をクリックすると拡大できます)
身分証明書
ちなみに、手数料は各市町村いよって異なりますが、1通につき300円のところが多いようです。

禁治産、準禁治産とは

禁治産、準禁治産とは、現在でいうところの成年後見制度のようなものです。

平成12年4月1日から成年後見制度が始まったのですが、それまでは精神的な障害によって正常な判断ができない人を、その障害の程度により「禁治産者」や「準禁治産者」と呼んでいたのです。

禁治産者=成年被後見人、準禁治産者=被保佐人と考えていただければOKです。

なぜ古物商許可申請に「登記されていないことの証明書」と「身分証明書」が必要なのか?

※登記されていないことの証明書は法改正により令和元年12月14日より不要になりました。

では、なぜこれらの書類が古物商許可申請に必要となるのでしょうか?

それは、欠格事由に該当しないことを証明するためです。

ではまず、古物商許可の欠格事由を確認してみましょう。ちなみに欠格事由とは、不許可になる要件のことです。

古物営業法4条

  1. 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
  2. 禁錮以上の刑に処せられ、又は無許可営業、虚偽申請、名義貸し等による罪若しくは窃盗、背任行為、遺失物等横領、盗品譲受等の罪を犯して罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることのなくなった日から起算して5年を経過しない者
  3. 集団的に、又は常習的に暴力的不法行為その他の罪に当たる違法な行為で古物営業法施行規則で定めるものを行うおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者(※平成30年10月24日追加)
  4. 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律に規定された命令又は指示を受けた者であって、当該命令又は指示を受けた日から起算して3年を経過しないもの(※平成30年10月24日追加)
  5. 住居の定まらない者
  6. 古物営業の許可を取り消され、当該取消しの日から起算して5年を経過しない者
  7. 許可の取消しに係る聴聞の期日及び場所が公示された日から当該取消しをする日又は当該取消しをしないことを決定する日までの間に古物営業の廃止による許可証の返納をした者で、当該返納の日から起算して5年を経過しないもの
  8. 心身の故障により古物商又は古物市場主の業務を適正に実施することができない者として古物営業法施行規則で定めるもの
  9. 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者。ただし、その者が古物商又は古物市場主の相続人であつて、その法定代理人が欠格事項のいずれにも該当しない場合を除くものとする
  10. 営業所又は古物市場ごとに管理者を選任すると認められないことについて相当な理由がある者
  11. 法人で、その役員のうちに第1号から第8号までの欠格事由のいずれかに該当する者があるもの



ここでは欠格事由の各事項について具体的に解説はしませんが、最初の一文に注目してください。

  • 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者


登記されていないことの証明書と身分証明書はこの欠格事由に該当しないことを公的な書面によって証明しているのです。

身分証明書だけで足りることになった!?

おそらく鋭い方は、疑問に感じたのではないでしょうか。

「上記の欠格事由に該当しないことを証明するのだとしたら、身分証明書だけで十分じゃないのか?」と。

確かに、禁治産者=成年被後見人、準禁治産者=被保佐人と考えることができますから、身分証明書によって成年被後見人、被保佐人でないことを証明することができ、さらに、破産者でないことも証明できるように思われます。

しかし、ここには法改正による問題があり、2種類の証明書が必要となっているのです。

成年被後見人および被保佐人も古物商許可を受けられるようになりました!

令和元年12月14日に施行された「成年被後見人等に係る欠格条項の見直しに伴う関係法律等の改正」により、それまで欠格事由に該当していた成年被後見人および被保佐人であっても古物商許可を受けられるようになりました。これに伴い、登記されていないことの証明書は不要となり、身分証明書だけで足りることになりました。

古物商許可申請に「登記されていないことの証明書」が必要な理由

※登記されていないことの証明書は法改正により令和元年12月14日より不要になりました。

平成12年4月1日に「後見登記に関する法律」の施行に伴い、禁治産および準禁治産の制度に代わって成年後見登記制度が開始されました。

それまで禁治産や準禁治産の宣告を受けた場合には、その旨が戸籍に記載されていましたが、成年後見登記制度により後見等の開始が決定されると、その旨が登記されることになりました。

ですから、基本的には「登記されていないことの証明書」が成年後見等についての公的な証明書類という位置付けになります。

当然に、平成12年4月1日以降、古物商許可の欠格事由である「成年被後見人又は被保佐人でないこと」の証明は、法務局が交付する「登記されていないことの証明書」により行うことになりました。

しかし、登記されているのは、平成12年4月1日以降に成年被後見人または被保佐人になった人、または元々禁治産者、準禁治産者であって平成12年4月1日以降に登記を行った人だけです。

一方で、禁治産、準禁治産の宣告を受けていた者が登記を行っていない場合には、引き続き戸籍にその旨が記載されている状況になっています。

ですから、古物商許可の欠格事由に該当しないことを証明するためには、本来、「登記されていないことの証明書」によって行うことになっていますが、登記していない者がいるため、「身分証明書」も必要となっているのです。

余談ですが、外国人が申請したり、法人の役員である場合には身分証明書は不要です。

まとめ

いかがでしょうか?

令和元年12月14日から登記されていないことの証明書は古物商許可申請に不要となり、身分証明書によって破産について確認するだけでよくなりました。

これにより、法務局へ行く必要がなくなりましたので、書類を収集するための手間が少し省けるよになったのではないかと思います。

なお、身分証明書については住所地の市役所ではなく本籍地の市町村役場でないと取得できませんので、間違えないようにお気を付けください。