古物商の義務|帳簿(古物台帳)の備付けとは?

前回、このサイトでは古物商と古物市場主に課される取引の記録義務についてご紹介しました。


取引の記録は帳簿(古物台帳)などにするわけですが、せっかく記録したものをすぐに廃棄したり紛失してしまっては意味がありません。

なぜなら、取引の記録は盗品などが古物市場に流入してしまった場合に、速やかにその経路を辿り被害の迅速な回復に資するものだからです。

そこで古物営業法は、古物商または古物市場主に対し帳簿(古物台帳)等の備え付け義務を定めています。

今回は帳簿(古物台帳)の備付け義務についてご紹介したいと思います。

備付け義務と保管の期間

もし、取引の記録を永久保存しなければならないとなると、日々データが蓄積しその管理自体が大変な作業となってしまいます。

日頃から大量の取引を行う法人や、規模の小さい自営の古物商にとって大きな負担となってしまう可能性があります。データ管理に労力を奪われ、肝心な古物商としての義務履行がおろそかになってしまっては本末転倒です。

そこで、帳簿(古物台帳)等の備付けは、記録した日から3年間と規定されています。

古物営業法18条1項(要約)

  • 古物商又は古物市場主は、帳簿等を最終の記載をした日から3年間営業所若しくは古物市場に備え付け、又は電磁的方法による記録を当該記録をした日から3年間営業所若しくは古物市場において直ちに書面に表示することができるようにして保存しておかなければならない。



保管場所は、営業所もしくは古物市場でなければならず、自宅やその他の場所ではいけません。

なお、この備付け義務に違反すると、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に処される可能性があります。

「直ちに書面に表示できるようにして」とは?

帳簿(古物台帳)等は書面ではなく、パソコンなどに記録しても構いません。しかし、その場合にはデータを直ちに書面に表示できるような状態で保存しておかなければなりません。

例えば、古物の取引を記録したUSBを要求されたときに直ちに印刷できるようにプリンターを設置した営業所で保存すれば、保存義務を果たしているといえるでしょう。

帳簿(古物台帳)を紛失したらどうする?

せっかく適法に取引を記録したのにも関わらず、そのデータを棄損したり紛失してしまったときは、そのままにしておいてはいけません。

この場合は警察署に届け出る必要があります。

古物営業法18条2項(要約)

  • 古物商又は古物市場主は、帳簿等又は電磁的方法による記録をき損し、若しくは亡失し、又はこれらが滅失したときは、直ちに営業所又は古物市場の所在地の所轄警察署長に届け出なければならない。



届出をするべき警察署は、営業所または古物市場主の所在地を管轄する警察署になります。たとえば、営業所が北名古屋市にあるなら西枇杷島警察署に届け出なければならないというわけです。

なお、パソコンのデータが棄損や滅失する場合として考えられるのは、たとえば、強力な磁気によってデータが消滅したり、コンピュータウイルスによってデータが破壊された場合などです。

また、この届出義務に違反すると、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に処される可能性があります。

まとめ

いかがでしょうか?

常識として、取引の記録は営業所で行うでしょうしわざわざデータを外に持ち出すことも考えられません。したがって、常識の範囲内で通常の営業を行う場合においてはそれほど気にすることはないかもしれません。

ただ、紛失や滅失などが起こらないように保管の方法には注意をしていただく必要があるでしょう。