古物商が古物営業を行う際、故意でなくても盗品などを取り扱うことのないようにする社会的責任があります。
そこで古物商には、取り扱う物品に盗品の可能性が疑われるものがある場合、直ちに警察署に連絡し、「持ち込まれた古物が盗品である可能性がある」旨を申告しなければならないという義務が課せられています。
古物営業法15条3項
- 古物商は、古物を買い受け、若しくは交換し、又は売却若しくは交換の委託を受けようとする場合において、当該古物について不正品の疑いがあると認めるときは、直ちに、警察官にその旨を申告しなければならない。
今回は古物商の申告義務についてご紹介したいと思います。
「不正品の疑いがあると認めたとき」とは?
古物営業法によると、古物商は「不正品の疑いがあると認めるとき」に申告しなければならないのですが、では具体的にどんなときに警察署に申告をしなければならないのでしょうか?
例えば、次のようなときです。
- 相手の職業や年齢からすれば不相応なもの
- 量が多すぎると認められるとき
- 相手の態度がおかしいとき など
例えば、未成年の者がブランド品などの高価な商品を多数持ち込んだ場合、常識的に「どうやって入手したのか?」と疑問に感じると思います。
そんなときは、不正品の可能性があるため積極的に警察署に連絡をするようにしましょう。古物商には品物の価値を見極める力に加えて、取引相手を見極める能力も必要ということです。
自動車・バイク・原付の取引は特に要注意!
自動車・バイク・原付は私たちの生活に欠かせないものであり、決して安いものではないのですが、残念ながら盗難されやすいものでもあります。しかも整備や登録などには専門知識を必要とするため、経験不足の古物商は盗品を見逃してしまう恐れがあります。
そこで自動車・バイク・原付を取り扱う古物商は、管理者に対して車台番号の打刻部分、改造の有無、その程度などを判定するために必要な知識、技術または経験を得させるように努めなくてはならないとされています。
また、必要な知識、技術または経験とは、中古車や中古バイクを取り扱う古物営業に3年以上従事した者が有する知識等が求められています。
古物営業法13条3項
- 古物商又は古物市場主は、管理者に、取り扱う古物が不正品であるかどうかを判断するために必要なものとして国家公安委員会規則で定める知識、技術又は経験を得させるよう努めなければならない。
古物営業法施行規則14条
- 古物営業法13条3項 の国家公安委員会規則で定める知識、技術又は経験は、自動車、自動二輪車又は原動機付自転車を取り扱う営業所又は古物市場の管理者については、不正品の疑いがある自動車、自動二輪車又は原動機付自転車の車体、車台番号打刻部分等における改造等の有無並びに改造等がある場合にはその態様及び程度を判定するために必要とされる知識、技術又は経験であって、当該知識、技術又は経験を必要とする古物営業の業務に3年以上従事した者が通常有し、一般社団法人又は一般財団法人その他の団体が行う講習の受講その他の方法により得ることができるものとする。
例えば、複数の都道府県に営業所を持つ個人や法人は1つの許可さえあれば、届出をするだけで全国の営業所において古物営業が可能になります。 しかし、実際に古物を取引する営業所や古物市場において、まったく知識のない者が古物営業を …
宝石・貴金属等を取り扱う古物商は犯罪収益移転防止法について知っておこう!
取引価格には関係なく、宝石・貴金属等を取り扱う古物商は、犯罪収益移転防止法により、取得した古物または現金が犯罪による収益である疑いがあり、または顧客が犯罪収益隠匿罪に当たる行為を行っている疑いがあると認められる場合は都道府県公安委員会に対し届け出る義務があります。
犯罪による収益である疑い
犯罪による収益である疑いとは犯罪によって得た財産のことを指しますが、例えば次のようなものです。
- 詐欺や恐喝などの犯罪により得たお金で不動産や宝石を購入する場合
- 窃盗や強盗によって奪った宝石を古物商で売却する場合
届出内容
届け出る内容は次の通りです。
- 事業者の名称および所在地
- 取引の年月日および場所
- 取引が発生した業務の内容
- 取引に係る財産の内容
- 顧客の氏名および住所
- 疑わしい取引の届出を行う理由
届出先
通常の古物商の申告は警察官に対してすればよいのに対し、宝石・貴金属等を取り扱う古物商は都道府県の公安委員会に対して申告しなければならない点に注意してください。
まとめ
不正品である疑いを抱くポイントというのは、人によってまたは取り扱う古物によって変わるものかもしれません。
人間の心理として、「あれ?何かおかしいな?」と感じても、「大丈夫だろう。」考えてしまいがちです。しかし、たとえ警察署に連絡し最終的にそれが盗品ではなかったとしても処罰されるわけではありません。
ですから、少しでも疑いを感じた場合には積極的に申告するようにし、泥棒から古物を買い取ってしまわないようにしましょう。
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