なぜ古物商許可が必要なのか?今更きけない疑問に行政書士が解答します!

おそらくあなたは、「中古品の取引になぜ古物商許可が必要なのか?」「しかもなぜ窓口が警察署なのか?」などと古物商に関する疑問を抱いたことはないでしょうか?

古物商許可制度は古物営業法にという法律によって定められてるのですが、法令で規制しなければならないうえに警察が管轄する「ワケ」がそこにはあると考えられます。

今回は、「なぜ古物商許可が必要なのか?」について考えてみたいと思います。

法律の「目的」を示した条文に注目してみよう!

法律を読んだことのない方はご存知ないかもしれませんが、多くの法律には、その法律を定めることによって成し遂げたい「目的」というものがあります。そして、その「目的」は最初の条文に明記されていることがほとんどです。

この「目的」が書かれた条文を読み解くことで、なぜ規制されるのかを理解することができます。

いくつか例を挙げてみましょう。

農地法の「目的」

農地法では、その目的が次のように定めれています。

農地法第1条(目的)

  • この法律は、国内の農業生産の基盤である農地が現在及び将来における国民のための限られた資源であり、かつ、地域における貴重な資源であることにかんがみ、耕作者自らによる農地の所有が果たしてきている重要な役割も踏まえつつ、農地を農地以外のものにすることを規制するとともに、農地を効率的に利用する耕作者による地域との調和に配慮した農地についての権利の取得を促進し、及び農地の利用関係を調整し、並びに農地の農業上の利用を確保するための措置を講ずることにより、耕作者の地位の安定と国内の農業生産の増大を図り、もって国民に対する食料の安定供給の確保に資することを目的とする。



大変長い一文ですが、重要なポイントは最後の文章に集約されています。つまり、農地法の目的は以下の3つといえるでしょう。

  1. 耕作者の地位の安定
  2. 国内の農業生産の増大を図る
  3. 国民に対する食料の安定供給の確保



上記の目的を達成するために、農地法の規制は必要であるということを表しています。

個人情報保護法の「目的」

個人情報保護法の「目的」は、以下の通りです。

個人情報保護法第1条(目的)

  • この法律は、高度情報通信社会の進展に伴い個人情報の利用が著しく拡大していることにかんがみ、個人情報の適正な取扱いに関し、基本理念及び政府による基本方針の作成その他の個人情報の保護に関する施策の基本となる事項を定め、国及び地方公共団体の責務等を明らかにするとともに、個人情報を取り扱う事業者の遵守すべき義務等を定めることにより、個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的とする。



個人情報保護法の目的は次の2つであることが読み取れます。

  1. 国及び地方公共団体の責務等を明らかにする
  2. 個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護する



ここでポイントとなるのは、「有用性に配慮しつつ・・・」というところで、個人情報を活用することは便利な一面もあることを認めており、個人情報の使用をガチガチに規制するものではないということがご理解いただけるかと思います。

古物営業法の「目的」

では、本題に戻り、古物商許可制度の「目的」について考えてみます。

古物商許可制度の「目的」は、古物営業法において次のように定められています。

古物営業法第1条(目的)

  • この法律は、盗品等の売買の防止、速やかな発見等を図るため、古物営業に係る業務について必要な規制等を行い、もって窃盗その他の犯罪の防止を図り、及びその被害の迅速な回復に資することを目的とする。



例示としてご紹介した農地法や個人情報保護法に比べて、短く読みやすい文章になっていますが、古物商許可の「目的」は次の2つだと考えられます。

  1. 窃盗その他の犯罪の防止
  2. 被害の迅速な回復



改めて書きだす必要はなかったかもしれませんが、「防犯」「迅速な解決」が古物商許可制度の「目的」といえるでしょう。

古物を扱うということは、窃盗品を市場に流通させてしまうリスクも伴っています。したがって、古物商や古物市場主には許可によって恩恵を受けることができる反面、売主の本人確認や帳簿付けのなどの義務を負うことになります。

これにより、窃盗犯が盗品を売却して現金を手に入れる窓口を行政が管理することによって防犯の効果を期待し、万が一盗品が売り渡されてしまったとしても、その足取りを速やかにたどることができるようになっているのです。

このことから、申請先が警察を管轄する公安委員会であることも納得していただけると思います。

公安委員会

都道府県警察を管理する行政機関のこと。各都道府県に置かれている。古物商許可は公安委員会が許可権者ですが、申請は管轄の警察署を経由して行う。

まとめ

いかかでしょうか?

古物を取扱うためになぜ許可が必要とされるのか、お分かりいただけたのではないでしょうか?

再度確認ですが、古物営業法の目的は、

  • 窃盗その他の犯罪の防止
  • 被害の迅速な回復

この2つです。古物商の方や古物商になりたいという方はぜひ理解しておいてください。

法律による規制とは私たちの自由を制限するものですが、「公共の利益のため」とも捉えることができます。

規制の程度については賛否両論あるでしょうからここで掘り下げることはしませんが、「何のための規制なのか?」を理解することによって、その制度に対する考え方も変わるかもしれませんね。