古物商が古物の買受けを行う際には、原則として取引相手の真偽を確かめるための本人確認をしなくてはなりません。
以前、このサイトでも本人確認の方法をご紹介しました。
本人確認の方法についてはこちらで確認できます。
本人確認は、防犯上とても重要ではありますが、一定の場合には本人確認の義務が免除されることがあることをご存知だったでしょうか?
今回は、例外的に本人確認が免除される場合について解説していきます。
確認義務の例外
次の場合については、本人の確認義務が免除されます。
古物営業法15条2項(要約)
- 対価の総額が国家公安委員会規則で定める金額未満である取引をする場合
(特に本人確認をする必要があるものとして国家公安委員会規則で定める古物に係る取引をする場合を除く。) - 自己が売却した物品を当該売却の相手方から買い受ける場合
一定金額未満の古物の取引において本人確認が免除されるのは、窃盗等の犯罪の被害状況や盗品等の古物商への流入実態等を勘案して、特に盗品等の流入を防止すべき必要性のある古物を除き、身分確認義務を免除することとされているからです。
少額の取引においては、犯罪のリスクや被害が小さいため、防犯よりも古物商の負担軽減や取引の効率化が重視されていると考えることができるでしょう。
国家公安委員会規則で定める金額
では、本人確認が免除される金額とはいくらのことなんでしょうか?
古物営業法施行規則では、次のように定めています。
古物営業法施行規則16条1項
- 国家公安委員会規則で定める金額は、1万円とする。
つまり、取引の対価の総額が1万円未満の場合は、原則として本人確認をする必要はないということになります。
1万円未満でも本人確認が免除されない古物の取引
1万円未満の取引であっても、次の物品については本人確認は免除されませんので注意が必要です。
古物営業法施行規則16条2項
- 自動二輪車及び原動機付自転車(これらの部分品(ねじ、ボルト、ナット、コードその他の汎用性の部分品を除く。)を含む。)
- 専ら家庭用コンピュータゲームに用いられるプログラムを記録した物
- 光学的方法により音又は影像を記録した物
- 書籍
上記の物品については、市場で頻繁に取引きされており、特に犯罪につながりやすいため、取引価格が1万円未満だとしても本人確認は免除されません。
専ら家庭用コンピュータゲームに用いられるプログラムを記録した物
専ら家庭用コンピュータゲームに用いられるプログラムを記録した物とは、テレビゲーム、パソコンゲームなどのゲームソフトのことで、カートリッジ、CD、DVDなどの形式は問いません。
光学的方法により音又は影像を記録した物
光学的方法により音又は影像を記録した物とは、音楽や映画、テレビ番組等が記録されたCD、DVD、レーザーディスク、ブルーレイディスク等のことです。
犯罪収益移転防止法に注意!
古物の売買には、古物営業法の他に犯罪収益移転防止法という別の法律も関わってくることがあります。
犯罪収益移転防止法によると、たとえ売却時であっても200万円を超える宝石・貴金属等の現金取引の場合は本人の確認義務が発生しますので注意が必要です。
まとめ
いかがでしょうか?
大規模に古物営業をしない方の中には、本人確認をまったくしなくても問題無い方もいらっしゃるかもしれません。
1万円未満の取引では本人確認が免除されているからといって、「本人確認をしてはいけない」というわけではありません。
自主的に本人確認をすることを禁止しているわけではないので、防犯意識の高い古物商の方は、常に本人確認をされても問題はありません。
いざというときに、重要な手掛かりとなるかもしれません。
最後に、本人確認の義務について表でまとめておきます。
取引の形態 | 売却の場合 | 買取りの場合 |
---|---|---|
対価の総額が1万円以上 | 確認義務なし (200万を超える現金取引の場合は義務あり) |
すべての古物について本人確認が必要 |
対価の総額が1万円未満 | 確認義務なし | ゲームソフト、バイク、原付、書籍、CD、DVD等の場合には本人確認義務がある |
参考にしてみてください。