古物取引における相手方の身分確認についてよくある質問をまとめてみました。
Q1.相手方の確認や取引の記録は、毎回行わなければならないのですか?
古物商が行った取引の対価の総額が1万円未満の場合、相手方の確認や帳簿の記載義務が免除される場合があります。
Q2.1万円未満の古物を売却した場合には、すべての相手方の確認や取引の記録義務が免除されるんでしょうか?
対価の総額が1万円未満の取引の場合は、原則として相手の確認や取引の記録の義務が免除されますが、ゲームソフトやバイク、書籍、CDなどを取引する場合については、これらの義務は免除されませんので注意が必要です。
また、200万円を超える現金取引の場合は、犯罪収益移転防止法により売却時でも本人の確認が必要になりますのでご注意ください。
相手の確認方法についてはこちらをご覧ください。
相手の確認が免除される場合についてはこちらをご覧ください。
取引の記録についてはこちらをご覧ください。
Q3.少額での書籍の買取りしかやっていませんが、相手の確認は必要ですか?
ほとんどの古物の取引では、取引の対価の総額が1万円以下の場合、相手方の確認は免除されますが、書籍についてはたとえ取引価格が1万円以下だったとしても相手方の確認が必要になりますので注意が必要です。
なお、買い取った書籍を売却するときは相手の確認をする必要はありません。このとき、買う者が転売目的であるならば古物商であるはずですから、その者があなたの確認を行うことになります。
Q4.取引伝票に自筆で署名してもらえば、相手方の確認をしたことになりますか?
対面による取引の場合、相手方の確認をする方法の1つとして、「相手方からその住所、氏名、職業及び年齢が記載された文書の交付を受ける」という方法があります。
この方法を採用する場合、相手方から受け取る文書として取引伝票を使用しても問題ありません。ただし、署名だけでは不十分で、相手方の住所、氏名、年齢、職業が合わせて記載されていなければなりません。
また、署名は古物商(管理人、店員など)の面前で万年筆やボールペン等により明瞭になされたものでなくてはなりません。
なお、記載事項や署名が怪しいと感じた場合には、同時に身分証明書等によってこれを確認する必要があります。
相手方の確認方法についてはこちらで確認できます。
ちなみに、200万円を超える宝石・貴金属等の現金取引の場合は、犯罪収益移転防止法により必ず運転免許証などの公的な身分証明書の提示を受けなくてはなりませんのでご注意ください。
Q5.署名はなぜ「面前で」しなければならないのですか?
署名は、その署名した者を特定するための重要な措置とされており、面前の相手方がその署名をしたことを確認することに意味があるのです。
面前で署名されたものでなければ、誰の署名か分からず、署名した人を特定することはできません。ですから、あらかじめ署名されている文書を受け取ったとしても、相手の確認をしたことにはならないということです。
Q6.「住民票の写し」とは、住民票をコピーしたものですか?
相手方の確認資料として登場することもある「住民票の写し」ですが、決してコピーしたもののことではなく、市役所で取得した「原本」のことです。
ではなぜ「写し」というのか?ということなんですが、そもそも住民票とは市町村に備え付けられているものであり、本当の原本が交付されることはありません。
つまり、私たちが市役所で入手し、「原本」と思っているものはあくまで「写し」なのであって本当の原本ではないのです。
しかし、見た目が特殊な用紙であって、便宜的に「原本」(実際は写し)と呼んだりしているので、「原本」(実際は写し)に対して「住民票の写し」がコピーであると勘違いする方が多くいらっしゃるようです。
余分かもしれませんが、コピーされた住民票は、厳密には「住民票の写しの写し」と表現することができるでしょう。
Q7.インターネットオークションを利用して買受けをする場合も非対面取引における相手方の確認を行わなければならなのですか?
インターネットオークションに参加するには、会員登録やパスワードによるログインが必要で、利用者の身元確認は必要ないと思われるかもしれません。
しかし、残念ながら古物商がインターネットオークションを利用して古物を買い受けする場合は、対面取引であっても非対面取引であっても、相手方の確認を省くことはできません。
この点が、古物商の責任であり、一般の利用者とは異なっている点でもあるわけです。
もちろん、古物商ではない一般の利用者が転売目的でインターネットオークションで中古品等を買取ると、無許可営業となりますので十分に注意してください。
Q8.非対面による取引において、運転免許証や健康保険証のコピーを送付してもらう方法について詳しく教えて下さい。
非対面による取引において運転免許証や保険証のコピーの送付を受ける方法は次の通りに定められています。
古物営業法施行規則15条3項6号
- 相手方からその住所、氏名、職業及び年齢の申出を受けるとともにその身分証明書、運転免許証、国民健康保険被保険者証等その者の身元を確かめるに足りる資料の写し(明瞭に表示されたものに限る。)の送付を受け、当該資料の写しに記載されたその者の住所に宛てて配達記録郵便物等で転送をしない取扱いをされるものを送付し、かつ、その到達を確かめ、並びに当該資料の写しに記載されたその者の氏名を名義人の氏名とする預貯金口座への振込み又は振替の方法により当該古物の代金を支払うことを約すること。
上記の方法では、次の3つの作業を行わなくてはなりません。
- 身分証明書等のコピーの送付を受ける
- 配達記録郵便物等を送付し、その到達を確かめる
- 本人名義の口座に代金を振り込む
これは、コピー機を使えば特段の技術なく簡単に複製を作れてしまうことから、②において住所を、③において氏名を確認をする必要があるからです。
配達記録郵便は廃止された!?
配達記録郵便とは、受取人に配達するときにその配達の証に受取人の受領の㊞を受けるなどの取扱いをすることとされている日本郵政のサービスです。
これを、転送をしない取扱いにすることにより、郵便物が宛先の住んでいる者に交付されたことが明らかにできます。
しかし、平成21年に配達記録郵便は廃止され、新たに「特定記録郵便」というサービスが始まりました。
特定記録郵便とは、郵便局が差出人かた郵便物を引き受けた記録が残るというサービスで、郵送先では宛先のポストに投函されます。
したがって、ポストへの投函では確実に相手が受け取るとは限りませんので、配達記録郵便の替わりとして特定記録郵便を利用することはできませんのでご注意ください。
転送をしない取扱い
転送をしない取扱いとは、差出人が指定した送付先と異なる場所に送付する取扱いをしないことです。
なぜ転送をしない取扱いが必要なのかというと、差出人が指定した場所に送付されたときに、配達記録郵便のような方法によってその到着を確かめたとしても、その送付先の住所が身分証明書等で確認した住所と異なっていたとしたら、その住所と相手が結びつくことにならないからです。
したがって、相手が不在のときに郵便物を隣人に預けたり、宅配ボックスに入れるなどの取扱いは転送をしない取扱いに該当しませんので注意が必要です。
配達記録郵便の替わりの方法はあるのか?
廃止されてしまった配達記録郵便物の替わりの方法としては、書留と本人限定受取のサービスを併用する方法が考えられます。
書留の郵便物を受け取る際には、㊞やサインが必要になりますが、本人でなくても受け取れてしまうため、本人確認としては不十分です。
そこで、本人限定受取のサービスを併用することによって確実に本人に受け取ってもらい、受取の証拠を得ることができます。
なお、本人限定受取のサービスを利用する場合は、自動的に一般書留にする必要がありますので、本人限定受取だけを利用すればよいと言い換えることができます。
本人限定受取
本人限定受取とは、郵便物等に記載された名あて人または差出人が指定した者に限り、郵便物等が渡されるという日本郵政のサービスです。
郵便局以外の郵送方法が使えないのか?
ここまで郵便局のサービスを利用した方法をご紹介してきましたが、上記と同様に取り扱いをするものであれば、宅急便などの他社のサービスを利用しても問題ありません。