以前、このサイトでは、どんな場合に変更届の提出が必要になるのかをご紹介しました。
古物商が変更届を提出する場合についてはこちらをご覧ください。
古物営業を1つの営業所や古物市場で行っているのであれば、わざわざ遠方の警察署に変更届出をする必要はありません。
古物商許可を申請した警察署、つまり、その営業所を管轄する警察署に届出をすることになります。この場合、迷うことなく判断できると思います。
しかし、古物営業をされている方のなかには、複数の営業書を運営されていたり、複数の県にまたがって営業所を経営されている方もいらっしゃいます。
あなたは、複数の営業所がある場合で、その一部に変更事項があったとき、どこの警察署で手続きをするのか、曖昧になっていないでしょうか?
今回は、変更届をどこの警察署に提出するのかについてご紹介することにしましょう。
同一県内のみで古物営業をしている場合
変更届の提出先について古物営業法施行規則では、次のように定めています。
古物営業法施行規則5条3項(抜粋)
- 公安委員会に届出書を提出する場合においては、経由警察署長を経由して、当該変更の日から14日以内に、正副二通の届出書を提出しなければならない。ただし、法第5条第1項第2号から第4号までに掲げる事項の変更に係る届出書を提出するときは、当該変更に係る営業所又は古物市場の所在地の所轄警察署長を経由することができる。
つまり、同一県内のみで古物営業をしている場合には、原則として、変更があった日から14日以内に許可を申請した警察署に変更届を提出することになります。
これは、許可申請をした警察署は、古物商または古物市場主にとっても、本店所在地の近くにある、最も便利な警察署を選んでいるはずなので、原則として、その警察署が拠点と考えることができるからです。
法第5条第1項第2号から第4号までに掲げる事項の変更に係るとき
例外として、次の事項に変更があった場合には、その変更が生じた営業所または古物市場を管轄する警察署に対しても、変更届を提出することができることになっています。
- 営業所または古物市場の名称および所在地
- 営業所または古物市場ごとに取り扱おうとする古物の区分
- 管理者の氏名および住所
古物の区分についてはこちらをご覧ください。
管理者についての詳しい解説はこちらで確認できます。
たとえば、ある法人が北名古屋市と一宮市で古物商の営業所を運営していたとしましょう。許可申請は北名古屋市の営業所を管轄する西枇杷島署で行いました。
もし、この法人の代表者の氏名が変更になった場合、変更届は許可申請をした西枇杷島署に提出しなければなりません。
一方で、一宮市の営業所の管理者が変更した場合には、一宮署もしくは西枇杷島署のどちらかに変更届を提出すればよいということになります。
これは、各営業所または各古物市場のみに関係する事項の変更については、各営業所または各古物市場の所在地を管轄する警察署にも提出することができるようにした方が、古物商または古物市場主にとっても便利であると考えられるからです。
経由警察署
古物商許可申請の際に経由した警察署のこと。
たとえば、名古屋市中村区で古物営業を始めようとするときには、中村警察署を経由して公安委員会に申請をすることになります。
このとき、中村警察署が経由警察署となります。
経由警察署の管轄内に営業所がなくなったとき
複数の営業所または古物市場を運営している場合において、古物営業の都合で許可申請をした経由警察署の管轄内から営業所を移転するなどして、営業所がなくなったときはどうしたらよいのでしょうか。
営業所がなくなれば、営業所の名称および所在地を変更して、前述のとおり変更届出書を経由警察署または営業所の所在地を管轄する警察署に提出することになります。
その際に、今後の経由警察署をどこにするのかを他の営業所の所在地を管轄する警察署の中から1つ選んで届出ることになります。
古物営業法施行規則9条(抜粋)
- 古物商又は古物市場主は、経由警察署長の管轄区域内に営業所又は古物市場を有しないこととなった場合において、公安委員会に届出書を提出するときは、当該届出書とともに、当該古物商又は古物市場主が現に当該公安委員会の管轄区域内に有する営業所又は古物市場(2以上の営業所又は2以上の古物市場を有する者にあっては、その者が選択したいずれか一の営業所又は古物市場)の名称及び所在地を記載した変更届出書を経由警察署長に提出しなければならない。
たとえば、ある法人が北名古屋市と一宮市で古物商の営業所を運営していたとしましょう。許可申請は北名古屋市の営業所を管轄する西枇杷島署で行いました。
つまり、西枇杷島署が経由警察署ということになります。
その後、営業上の都合により、北名古屋市の営業署を廃止することになりました。
このとき、次のような手続きをすることになります。
- 西枇杷島署(経由警察署)に営業所の廃止の届出をする。
- 西枇杷島署(経由警察署)に「今後は一宮署を経由警察署とする」旨の届出をする。
上記の手続きにより、今後は一宮署が経由警察署となります。
複数の都道府県にまたがって古物営業をしている場合
複数の都道府県にまたがって営業している古物商または古物市場主が営業内容の変更届を行う場合については、特例が定められています。
古物営業法7条2項
- 2以上の公安委員会の管轄区域内に営業所を有する古物商又は2以上の公安委員会の管轄区域内に古物市場を有する古物市場主は、第5条第1項第1号又は第7号に掲げる事項に変更があつたときは、そのいずれか1の公安委員会に同項の届出書を提出しなければならない。
第5条第1項第1号又は第7号に掲げる事項
第5条第1項第1号又は第7号に掲げる事項は、以下のとおりです。
- 氏名もしくは名称または住所もしくは居所
- 法人の代表者の氏名
- 法人の役員の氏名および住所
上記の内容に変更があった場合には、いずれか1つの公安委員会に届け出ればよいということになります。
たとえば、愛知県と岐阜県で古物営業を行っている法人があるとします。本社は愛知県です。古物商許可は愛知県と三重県の公安委員会から受けている状況です。
その後、その法人の代表者が変わった場合、愛知県か三重県のいずれか1つの公安委員会に届け出ればOKです。通常、本店所在地の公安委員会を選択するのが一般的です。
もちろん、直接公安委員会に届出をするわけではなく、愛知県か三重県の経由警察署に届出書を提出することになります。
法人の役員変更に注意!
上記の変更事項のうち、役員の変更が最も頻繁に起こり得るものだと思います。特に、株主総会で役員変更がされる場合が考えられます。
株主総会の慌ただしさや役員変更による経営の変革に、うっかり公安委員会への届出を忘れてしまう可能性があります。
しかし、この届出は法律上の義務であり、違反すると10万円以下の罰金となりますので、十分にご注意ください。
古物商の罰則についてはこちらをご覧ください。
まとめ
いかがでしょうか?
複雑に感じられた方もらっしゃるかもしれませんが、基本的には許可申請をした経由警察署を届出先と考えていただければ問題ないと思います。
営業所や代表者の変更など、大きな変化が起こる場合には「手続きが必要である」という意識が湧いてくると思います。
しかし、管理者の変更や役員の変更など、頻度の高い変更だとスルーしてしまいがちになってしまうと思いますので、届出が必要とされる変更事項をしっかりと記憶しておいてください。