盗品の出品を防ぐために古物競りあっせん業者が負う「申告」義務

あなたは、ネットオークションを利用して何かモノを購入したことがあるでしょうか?

ネットオークションでは、様々なものが出品され、入札状況によっては市場価格よりもずっと低い価格でお目当てのものを落札できることもあり、ネットオークションにハマってしまう方もいらっしゃると思います。

一方で、ネットオークションは対面での取引に比べて匿名性が高く、実際に商品をみることなく取引することがほとんどでしょう。

したがって、出品されている商品はどのような経路をたどってネットオークションに出品されるに至ったのかは、分からないということです。

あまり考えたくはありませんが、もしかすると、あなたがウォッチリストに入れている商品は盗品なのかもしれないのです。

そこで古物営業法では、ネットオークションの運営者である古物競りあっせん業者に対して、盗品と疑われる古物について警察に申告する義務を課し、あなたが盗品を落札してしまはないような仕組みが作られています。

古物競りあっせん業者の申告義務

古物競りあっせん業者は、出品された古物について盗品等の疑いがあると認めるときは、直ちに警察にその旨を申告しなければなりません。

古物営業法21の3

  • 古物競りあっせん業者は、あっせんの相手方が売却しようとする古物について、盗品等の疑いがあると認めるときは、直ちに、警察官にその旨を申告しなければならない。



これは、古物競りあっせん業者は、業としてネットオークションを運営しており利用者からの情報や苦情等にも対応しているので、盗品等の速やかな発見を期待して設けられた規定です。

疑いがあると認めるとき

古物競りあっせん業者は「疑いがあるときと認めるとき」に申告しなければなりませんが、法令に申告をすべき事項が定められているわけではなく、運営者の感覚に委ねられています。

しかし、それでは実質的な効果が見込めないため、警察庁が盗品等の疑いを認める可能性がある場合として特に注意を払うべきパターンを例示していますので、以下にそれを示します。

  1. 出品物が被害品であると疑うべきことについて一定の理由がある場合
  2. 出品物が、被害に遭わなければ出品されることは通常考えにくいものである場合
  3. 出品物を特定するためのものが削除されている場合
  4. 通常使用する場合に必要な書類がない場合
  5. その他



あくまで上記のパターンは例示にすぎません。したがって、実際にどんなときに盗品等の疑いを認めるかは、各運営者の判断となります。

ですから、上記の例示に該当するから申告をし、該当しないから申告をしないということではありませんので勘違いをしないようにしてください。

次に、それぞれの具体例を挙げていきます。

1.出品物が被害品であると疑うべきことについて一定の理由がある場合

(例)通報者が氏名、連絡先、被害品であるとする出品物及び被害の状況を明示しており、かつ、以下のいずれか事情がある場合。

  1. ホームページに掲載されている出品物の製造番号等と通報者から送付された保証書等の写しに記載されている製造番号等が合致する場合
  2. 財産犯に係る報道等において被害品の特徴が公開されており、それらの情報とホームページに掲載されている出品物の特徴が合致する場合
  3. ホームページに掲載されている出品物の特徴と通報者から送信された画像中の古物の特徴が合致する場合

2.出品物が、被害に遭わなければ出品されることは通常考えにくいものである場合

  1. 官公庁職員の身分証明書等が出品されている場合
    (例)職員証、通行証など
  2. 市販されていないものが出品されている場合
    (例)発売前の試作品、法令によって定められた制服など

3.出品物を特定するためのものが削除されている場合

  1. 車台番号のない自動車、製造番号が判別できないようなパソコン等が出品されている場合
    (例)出品者の説明欄に車台番号等がない旨が明記されていなくても、そのような状況の画像が掲載されているときなど

4.通常使用する場合に必要な書類がない場合

  1. 法令等で常備することが義務付けられている書類が、合理的理由がないのに備わっていない場合
    (例)車検証、自動車損害賠償責任保険の被保険者証など

5.その他

  1. 出品者が自らの出品物について、盗品等であるかのような記述をしている場合
    (例)「部品取り用であり登録はできません。この事情が分かる人だけ入札してください。」、「これは盗難車ですか」という質問はお答えしません。」などの記述がある場合など
  2. 競りの中止の命令を受けて削除された出品物と同一と認められるものが出品されている場合
    (例)製造番号等が一致するもの、同一の画像を掲載しているものなど

申告先

申告先は条文では「警察官」とされていますすが、とくに限定されているわけではありません。

しかし、申告に関する業務を円滑に遂行できるように、次のような部署に対して申告をすることが望ましいとされています。

  1. 申告の対象である古物について、既に被害届が提出されている場合は、当該被害届を受理した警察署
  2. 申告の端緒となった通報を古物競りあっせん業者に行った者あり、かつ、当該通報を行った者の住所等が判明している場合は、その住所等を管轄する警察本部のサイバー犯罪担当部署又は古物営業担当部署
  3. ①又は②以外の場合は、古物競りあっせん業者の営業の本拠となる事務所の所在地を管轄する警察本部のサイバー犯罪担当部署又は古物営業担当部署



なお、申告にあたっては、対象となる古物を出品されているページのURL等により特定しなければならないとされています。

申告の方法

申告の方法は特に限定されておらず、電子メール、ファックス、電話などにによる通報が考えられます。

まとめ

いかがでしょうか?

現にネットオークションでは、盗品が売却される事例が発生しているようです。

申告義務が規定されていたとしても、毎日大量の商品が取引されるネットオークションにおいて、すべての商品をもれなく監視することは簡単ではありません。

ネットオークションに参加するすべての人が、盗品を落札してしまわないように高い防犯意識を持つ必要があるでしょう。