取消し公安委員会は、一定の場合、古物商または古物市場主に対し、必要な指示、営業の停止または許可の取消しができることになっています。

古物商や古物市場主は、これらの公安委員会からの処分に従わなければなりません。

しかし、軽微な違反行為に対し公安委員会が、即時に営業停止や許可の取消しといった重い処罰をチラつかせるようなことになると、古物商や古物市場主は処罰を恐れて萎縮してしまい、自由な古物営業が阻害されてしまうことになります。

法令に定められていることをいいことに、恣意的な運用されることはあってはなりません。

そこで、どのような違反行為に対し、どの程度の対処をするのかについての一定の基準が設けられています。

今回は、古物営業法に基づく指示、営業停止命令および許可の取消しの基準について説明することにしましょう。

指示

公安委員会は、次の場合、古物商もしくは古物市場主に対してその業務の適正な実施を確保するため必要な措置をとるべきことを指示することができるとされています。

  1. 古物営業法またはこの法律に基づく命令に違反した場合
  2. その古物営業に関し他の法令の規定に違反した場合

古物営業法23条

  • 公安委員会は、古物商若しくは古物市場主又はこれらの代理人等が、この法律若しくはこの法律に基づく命令の規定に違反し、又はその古物営業に関し他の法令の規定に違反した場合において、盗品等の売買等の防止又は盗品等の速やかな発見が阻害されるおそれがあると認めるときは、当該古物商又は古物市場主に対し、その業務の適正な実施を確保するため必要な措置をとるべきことを指示することができる。

指示の対象となる違反行為の事例

以下に指示の対象となる違反行為の事例を列挙します。

なお、以下の違反行為は「古物商の指導監督が十分に行われていないことに起因して」行われた違反行為のことです。

つまり、古物商が古物営業に関して、その従業員等の指導監督を怠ったため、それをよいことに従業員等が引き起こした違反行為ということになります。古物商に過失はあるものの、自身が違反行為をしたわけではないパターンです。

  1. 競り売りの届出をしていないにもかかわらず、代理人等が競り売りをしたとき
  2. 代理人等が行商従業者証を携帯しないで行商をしたとき
  3. 代理人等が営業制限に違反したとき
  4. 代理人等が取引制限に違反したとき
  5. 代理人等が相手確認等をしなかったとき
  6. 代理人等が不正品に関する申告をしなかったとき
  7. 代理人等が帳簿への記載等をしなかったとき
  8. 代理人等が帳簿等への虚偽の記録をしたとき
  9. 代理人等が帳簿等の備付け等をしていないとき
  10. 代理人等が品触書の保管をしなかったとき
  11. 代理人等が品触れ相当品の届出をしなかったとき
  12. 代理人等が差止めを受けた物品を保管しなかったとき
  13. 代理人等が法令に違反した場合であって、事件として送致したとき等の態様が悪質であるとき



公安委員会は、上記の基準に該当しない場合であっても、法令違反行為の態様により必要があると認められるときは、指示をすることができるとされています。

指示では済まなくなるパターン

本来であれば指示を受けるだけで済む場合であっても、次のような場合には、指示を行わずに直ちに営業停止または許可の取消しができることになっています。

  1. 悪質な同種の法令違反行為を短期間に繰り返し、または指導警告を無視するなど、指示によって自主的に法令を遵守する見込みがないと認められる場合
  2. 指示の処分中に、その指示には違反していないが、その指示の理由となった法令違反行為と同一の法令違反をした場合
  3. 罰則の適用がある法令違反行為が行われ、事件として送致した場合

営業停止および許可の取消し

次に掲げる場合、公安委員会は、営業停止または許可の取消しを行うことができるとされています。

  1. 古物商もしくは古物市場主またはこれたの代理人等が、古物営業法またはその関係法令に違反した場合であって、盗品等の売買等の防止もしくは盗品等の速やかな発見が著しく阻害されるおそれがあると認めるとき。
  2. 古物商または古物市場主が古物営業法に基づく規定に違反したとき。

古物営業法24条

  • 公安委員会は、古物商若しくは古物市場主若しくはこれらの代理人等がこの法律若しくはこの法律に基づく命令の規定に違反し若しくはその古物営業に関し他の法令の規定に違反した場合において盗品等の売買等の防止若しくは盗品等の速やかな発見が著しく阻害されるおそれがあると認めるとき、又は古物商若しくは古物市場主がこの法律に基づく処分に違反したときは、当該古物商又は古物市場主に対し、その古物営業の許可を取り消し、又は6月を超えない範囲内で期間を定めて、その古物営業の全部若しくは一部の停止を命ずることができる。

営業停止の対象となる違反行為の事例

以下に該当する違反行為をした場合、営業停止を受ける対象となります。

なお、営業停止は指示の場合と異なり、「古物商の指導監督が全く行われていないことに起因して代理人等により」行われた違反行為、もしくは古物商または古物市場主自身が違反行為を行った場合です。

古物商による指導監督が、「十分にされていない」から「全くされていない」という条件になっており、より古物商の過失が大きい場合に営業停止の対象となります。

  1. 届出書等を提出しなかったとき、または虚偽の記載をした届出書を提出したとき
  2. 許可証の再交付を受けた場合において、紛失した許可証を発見したにもかかわらず、許可証を不当に返納しなかったとき
  3. 届出をしないで競り売りをしたとき、または虚偽の届出をしたとき
  4. 許可証を携帯しないで行商をし、または競り売りをしたとき
  5. 代理人等が行商従業者証を携帯しないで行商をしたとき
  6. 指導警告があったにもかかわらず、標識を掲示していないとき
  7. 管理者を選任していないとき
  8. 欠格事項に該当する者と知りながら、その者を管理者として選任していたとき
  9. 故意に営業制限に違反したとき
  10. 故意に古物市場主での取引制限に違反したとき
  11. 確認等をしなかったとき
  12. 不正品に関する申告をしなかったとき
  13. 帳簿等への記載等をしなかったとき、または虚偽の記録等をしたとき
  14. 不当に帳簿等の備付けをしていないとき
  15. 不当に帳簿等の棄損の届出をしていないとき
  16. 品触書の保存をしていないとき
  17. 品触れ相当品の届出をしなかったとき
  18. 差止めを受けた物品を保管していなかったとき
  19. 警察官の立入りまたは帳簿等の検査を不当に拒み、妨げたとき
  20. 不当に報告をしなかったとき
  21. 公安委員会の指示に従わないとき
  22. 古物営業に関し法令に違反した場合であって、事件として送致したときその態様が悪質であるとき



繰り返しになりますが、古物商の指導監督が全く行われていないことに起因して代理人等により行われた違反行為、もしくは古物商または古物市場主自身が違反行為を行った場合が該当します。

営業停止期間

営業停止となる期間は、違反行為の程度により次の4段階に分けられています。

  1. 20日以上120日以下
  2. 10日以上80日以下
  3. 5日以上40日以下
  4. 5日以上20日以下

営業停止期間の加重と軽減

次のような事由があるときは、営業停止期間が加重され、あるいは軽減される場合があります。

加重すべき事由

たとえば、次のような事由があるときは、営業停止期間は加重される可能性があります。

  1. 最近3年間に同一の法令に違反して指示または営業停止命令を受けたこと。
  2. 指示の処分中に、その指示の理由となった法令違反行為に係る法令の規定と同一の法令の規定に違反したこと。
  3. 法令違反行為の態様が著しく悪質であること。
  4. 代理人等の大多数が法令違反行為に加担していること。
  5. 法令違反状態の是正、改善に向けての努力が期待できないこと。
  6. 消費者センター等に苦情が多数寄せられていること。
  7. 結果が重大であり、社会的影響が大きいこと。



短期間で複数の法令違反行為をしたり、同じ法令違反を繰り返すと、営業停止期間が加重されることになります。

また、最近1年間に60日以上の営業停止命令を受けた古物商または古物市場主またはこれらの代理人等が、同一の法令違反を犯すと、許可の取消しとなる可能性がありますので注意が必要です。

軽減すべき事由

たとえば、次のような事由があるときは、営業停止期間は軽減される可能性があります。

  1. 他人に強いられて法令違反行為を行ったこと。
  2. 帰責性が著しく軽微であること。
  3. 最近3年間に法令違反行為がなく、反省がみられること。
  4. 具体的な改善措置を法令違反行為後自発的に行っていること。

許可の取消しの対象となる違反行為の事例

以下に該当する違反行為をした場合、営業停止を受ける対象となります。

  1. 他の都道府県で無許可営業を行ったとき
  2. 名義貸しをしたとき
  3. 営業停止命令に従わないとき



許可の取消しが最も重い処分ですから、上記の行為が最も悪質な違反行為であるといえるでしょう。

なお、上記以外の違反行為であっても、以前から違反を繰り返していたり、再び違反行為を行うおそれが強く古物営業の健全化がきたいできないと判断されると、許可の取消しを受ける可能性があります。

情状による軽減

本来ならば許可の取消しとなる事案であっても、情状により特に処分を軽減すべき事由があるときは、許可の取消しに代えて営業停止になることもあります。

営業の一部の停止

古物営業のうち、可分な特定の一部の営業のみを対象として営業停止命令を行うべき必要があり、かつ、それにより目的を達成できる場合には、営業の一部の停止命令を行うことになっています。

たとえば、以下のような場合には、一部の停止となる可能性があります。

  1. 公安委員会の管轄区域内に2つ以上の営業所を持つ古物商に対して営業停止命令を行うべき場合で、法令違反行為がそのうち一部の営業所のみに関係するとき
  2. 複数の区分の古物を取り扱っている古物商に対して営業停止命令を行うべき場合で、法令違反行為がそのうち一部の区分の古物のみに関係するとき



上記のような場合には、一部の営業所のみの営業停止や、一部の古物取引のみの営業停止をすることも考えられます。

まとめ

お疲れさまでした。最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

ご覧いただいた通り、かなり細かいところまで基準が設定されていることがお分かりいただけたと思います。

しかし、すべての事案がこの基準にバチっと当てはまるとは限りません。そういった場合は、公安委員会の裁量により合理的な判断が下されることになります。

ですから、「指示を受けるだけだから大丈夫だろう」と甘い考えで違反行為をすると、足元をすくわれる可能性もありますのでご注意ください。

一度許可を取り消されると、欠格事由に該当し、取消しの日から5年間は古物商許可を受けることができなくなりますので、営業を継続するためにも軽率な行為は厳に慎んでください。

古物商許可の欠格事由についてはこちらを参考にしてください。

古物営業法に定められた罰則についてはこちらでご確認ください。